作品: Works:
二つの敷地に建つ家
House on sites

敷地は地方のターミナル駅から車で10分ほどの戸建住宅と集合住宅、町工場がいり混じるエリアにある。利便性の良さから新たな住民の流入や家の更新がとろころどころで見られる。アパートのボリュームに匹敵する古い家屋も多く残っていて、周囲と比べれば開発されたのが比較的新しく、きれいな矩形の広い区画が整然と並び、それがアパートや工場のような規模を許容するゆとりをもつ。 築40年の木造二階建ての住まいは、時を経てテラスのある東側に鉄骨造のアパートが建ち、さらに西隣の建物が取り壊されて空き地になって、家のユーティリティ面がむき出しになった。こうして家の表が裏になって、裏が表になった。また親が建て、施主である子世代と孫世代の三世代が住み継ぐ家になった。家の近傍の環境の逆転に加えて、家族構成とその居場所も大きく変わってきた。 この家の建替え計画の途中で施主が西隣の空き地を購入し、隣地を含めた二倍以上の敷地に既存家屋を残して増築する計画に変更することにした。大きな二つの敷地を一体化にしてさらに大きな敷地に建替えるより、住宅地の宅地割りを生かして隣地にアネックスを増築することを選択した。異種混在とは言っても、統一された間口の連続と、宅地割りの境界線上の細長い抜けのリズムが街の特徴であり、風や土手への視線が通り抜ける環境上の利点もあった。 かつての空き地に間口2.8m、奥行き24mの細長い平屋のアネックスを、既存家屋を囲むように緩やかに湾曲させ、軒の深い屋根の下にはエントランス、リビング、ダイニング、キッチン、水回りを一列に連ねて配する。新旧二つの敷地のあいだにあった古いブロック塀を残し、それを跨ぐ太鼓橋とらせん階段、土間デッキを設け、ゆるやかな囲みと抜けをもつコートハウスを形成する。 新旧二棟は城と長屋門のようにボリューム感も形も異なるが、使い方に主従はない。どちらにも生活の中心を据えず家の個別のスペースの実態と相互のつながりから柔軟に居場所をきめられる。生活の中には昔の家と新しい家を見る視線が常にあり、この視界の前景には古い塀が残る空地が二つの時間を増幅させる。太鼓橋や塀を跨ぐ動きをとおして新旧の敷地の移動することで、異なる時間が流れはじめるような感覚が呼び出される。 建設の手順は、空き地にアネックスを増築する間は、旧宅から建設のプロセスを間近に見、アネックスの完成後にはアネックスに移り住み、旧宅の改修を見まもる。そして改修が終わると縮小していた生活を二つの家に拡散させていくものだった。この建設プロセスを経て、住み手はどちらかに軸足をおいた生活をいずれも実践し、二度の引越を通して二つの家に住む準備を整えていった。とはいえ、新旧の二つの家は機能面以外にもそれぞれが少しずつ欠けていて、行き来して補完し合うことで家の持つ本来の空間性が浮かび上がり、古い家の魅力や居場所の再発見につながる。住み替えのプロセスに生活のバックアップをとりながら移し替えていく冗長性を持たせたことで、二つの敷地をつなぐ家が実現した。 敷地は地方のターミナル駅から車で10分ほどの戸建住宅と集合住宅、町工場がいり混じるエリアにある。利便性の良さから新たな住民の流入や家の更新がとろころどころで見られる。アパートのボリュームに匹敵する古い家屋も多く残っていて、周囲と比べれば開発されたのが比較的新しく、きれいな矩形の広い区画が整然と並び、それがアパートや工場のような規模を許容するゆとりをもつ。 築40年の木造二階建ての住まいは、時を経てテラスのある東側に鉄骨造のアパートが建ち、さらに西隣の建物が取り壊されて空き地になって、家のユーティリティ面がむき出しになった。こうして家の表が裏になって、裏が表になった。また親が建て、施主である子世代と孫世代の三世代が住み継ぐ家になった。家の近傍の環境の逆転に加えて、家族構成とその居場所も大きく変わってきた。 この家の建替え計画の途中で施主が西隣の空き地を購入し、隣地を含めた二倍以上の敷地に既存家屋を残して増築する計画に変更することにした。大きな二つの敷地を一体化にしてさらに大きな敷地に建替えるより、住宅地の宅地割りを生かして隣地にアネックスを増築することを選択した。異種混在とは言っても、統一された間口の連続と、宅地割りの境界線上の細長い抜けのリズムが街の特徴であり、風や土手への視線が通り抜ける環境上の利点もあった。 かつての空き地に間口2.8m、奥行き24mの細長い平屋のアネックスを、既存家屋を囲むように緩やかに湾曲させ、軒の深い屋根の下にはエントランス、リビング、ダイニング、キッチン、水回りを一列に連ねて配する。新旧二つの敷地のあいだにあった古いブロック塀を残し、それを跨ぐ太鼓橋とらせん階段、土間デッキを設け、ゆるやかな囲みと抜けをもつコートハウスを形成する。 新旧二棟は城と長屋門のようにボリューム感も形も異なるが、使い方に主従はない。どちらにも生活の中心を据えず家の個別のスペースの実態と相互のつながりから柔軟に居場所をきめられる。生活の中には昔の家と新しい家を見る視線が常にあり、この視界の前景には古い塀が残る空地が二つの時間を増幅させる。太鼓橋や塀を跨ぐ動きをとおして新旧の敷地の移動することで、異なる時間が流れはじめるような感覚が呼び出される。 建設の手順は、空き地にアネックスを増築する間は、旧宅から建設のプロセスを間近に見、アネックスの完成後にはアネックスに移り住み、旧宅の改修を見まもる。そして改修が終わると縮小していた生活を二つの家に拡散させていくものだった。この建設プロセスを経て、住み手はどちらかに軸足をおいた生活をいずれも実践し、二度の引越を通して二つの家に住む準備を整えていった。とはいえ、新旧の二つの家は機能面以外にもそれぞれが少しずつ欠けていて、行き来して補完し合うことで家の持つ本来の空間性が浮かび上がり、古い家の魅力や居場所の再発見につながる。住み替えのプロセスに生活のバックアップをとりながら移し替えていく冗長性を持たせたことで、二つの敷地をつなぐ家が実現した。 敷地は地方のターミナル駅から車で10分ほどの戸建住宅と集合住宅、町工場がいり混じるエリアにある。利便性の良さから新たな住民の流入や家の更新がとろころどころで見られる。アパートのボリュームに匹敵する古い家屋も多く残っていて、周囲と比べれば開発されたのが比較的新しく、きれいな矩形の広い区画が整然と並び、それがアパートや工場のような規模を許容するゆとりをもつ。 築40年の木造二階建ての住まいは、時を経てテラスのある東側に鉄骨造のアパートが建ち、さらに西隣の建物が取り壊されて空き地になって、家のユーティリティ面がむき出しになった。こうして家の表が裏になって、裏が表になった。また親が建て、施主である子世代と孫世代の三世代が住み継ぐ家になった。家の近傍の環境の逆転に加えて、家族構成とその居場所も大きく変わってきた。 この家の建替え計画の途中で施主が西隣の空き地を購入し、隣地を含めた二倍以上の敷地に既存家屋を残して増築する計画に変更することにした。大きな二つの敷地を一体化にしてさらに大きな敷地に建替えるより、住宅地の宅地割りを生かして隣地にアネックスを増築することを選択した。異種混在とは言っても、統一された間口の連続と、宅地割りの境界線上の細長い抜けのリズムが街の特徴であり、風や土手への視線が通り抜ける環境上の利点もあった。 かつての空き地に間口2.8m、奥行き24mの細長い平屋のアネックスを、既存家屋を囲むように緩やかに湾曲させ、軒の深い屋根の下にはエントランス、リビング、ダイニング、キッチン、水回りを一列に連ねて配する。新旧二つの敷地のあいだにあった古いブロック塀を残し、それを跨ぐ太鼓橋とらせん階段、土間デッキを設け、ゆるやかな囲みと抜けをもつコートハウスを形成する。 新旧二棟は城と長屋門のようにボリューム感も形も異なるが、使い方に主従はない。どちらにも生活の中心を据えず家の個別のスペースの実態と相互のつながりから柔軟に居場所をきめられる。生活の中には昔の家と新しい家を見る視線が常にあり、この視界の前景には古い塀が残る空地が二つの時間を増幅させる。太鼓橋や塀を跨ぐ動きをとおして新旧の敷地の移動することで、異なる時間が流れはじめるような感覚が呼び出される。 建設の手順は、空き地にアネックスを増築する間は、旧宅から建設のプロセスを間近に見、アネックスの完成後にはアネックスに移り住み、旧宅の改修を見まもる。そして改修が終わると縮小していた生活を二つの家に拡散させていくものだった。この建設プロセスを経て、住み手はどちらかに軸足をおいた生活をいずれも実践し、二度の引越を通して二つの家に住む準備を整えていった。とはいえ、新旧の二つの家は機能面以外にもそれぞれが少しずつ欠けていて、行き来して補完し合うことで家の持つ本来の空間性が浮かび上がり、古い家の魅力や居場所の再発見につながる。住み替えのプロセスに生活のバックアップをとりながら移し替えていく冗長性を持たせたことで、二つの敷地をつなぐ家が実現した。

Architects: MATSUOKASATOSHITAMURAYUKI
Satoshi Matsuoka, Yuki, Tamura,
principals-in-charge; Yutaro Ito, project team
Consultants: ASA
General contractor: Tanaka Industry Co.,Ltd.
Structural system: wooden
Major materials: concrete floor, float glass wall, galvalume steel roof, bridge; aluminum sash (annex’s wall), corrugated polycarbonate plate (existing’s main wall), galvalume steel plates (roof), HDG steel (external stairs), exterior; plywood flooring, interior

Site area: 460.21 m2
Building area: 192.00 m2
Total floor area: 198.64 m2
Design: 2014-20
Construction: 2020-23
Straddling the site A 40-year-old two-story wooden house located in a residential area a short 10-minute drive from the main station and a short distance from the main road. The circumstances surrounding the house have changed dramatically since its completion. The approach, entrance, and living room are now located on the east side of the house, with the exterior corridor of the apartment building on the west side, where the water supply area used to be located, demolished to make way for a vacant lot. The initially envisioned surroundings of the house were completely reversed. During the design process, the owner purchased the vacant lot next door, and we decided to build a separate building on the vacant lot next door to the west, placing the court surrounded by the two buildings, old and new, at the center of the house. In this residential area with loose use restrictions, the lot layout is the limited common property remaining in the community. The rhythm of the site's frontage and the open space on the boundary line that allows sightlines and breezes to flow out to the river bank were not compromised, and the two houses and the entirety of the site were planned to connect these environments. The long, slender, one-story new building is curved to enclose the renovated building, and is connected to it by an external spiral staircase and a drum bridge that straddles the block wall that remains as the boundary between the two buildings. The space between the two buildings is an earthen floor that forms a court with a loose enclosure and open space. While the new building has a compact arrangement of daily functions in a single row, the renovated building has a sunroom with a vaulted ceiling to accommodate the snowfall and limited daylight hours characteristic of the San-in region, by removing the water closet on the west side. All the rooms in the renovated building are connected to the boundary court and the new building beyond through the sunroom with a sweeping window. The living room in the new building and the sunroom in the renovated building form a large living zone across the court, and the dining room in the new building and the tea room in the renovated building form a large dining zone via a drum bridge. The center of gravity of the living space is not located in either the old or the new building, and the plan allows for flexible use of the large connection between the two sites. The house is a house where one feels to live in a large environment, using the movement across the wall between the old house and the new site as a milestone.

Architects: MATSUOKASATOSHITAMURAYUKI
Satoshi Matsuoka, Yuki, Tamura,
principals-in-charge; Yutaro Ito, project team
Consultants: ASA
General contractor: Tanaka Industry Co.,Ltd.
Structural system: wooden
Major materials: concrete floor, float glass wall, galvalume steel roof, bridge; aluminum sash (annex’s wall), corrugated polycarbonate plate (existing’s main wall), galvalume steel plates (roof), HDG steel (external stairs), exterior; plywood flooring, interior

Site area: 460.21 m2
Building area: 192.00 m2
Total floor area: 198.64 m2
Design: 2014-20
Construction: 2020-23
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