作品: Works:
ハウスとゲート
House & Gate

この住宅は、9つの門を立体的に積むことでできている。屋根と建具がセットになったバラバラの門が、家の領域を形づくっている。門の下だけでなく上にも居場所があって、屋根をくぐった向こう側や屋根の上をとび越えた先にも家が延長されている。それぞれの門にはまる引戸を開けると、家のかたちが次第にほどけて、ちぎれた境界のすき間から隣家の庭や山の風景が勢いよく内側に入り込んでくる。

逆に引戸を閉じると、屋根と建具面が大きくズレて、家全体としてバラバラのままで内部のかたちが現れてくる。門の周りにできる門先(かどさき)の空間は、それぞれで使えるサイズと設えをもたせ、いろいろな行為がつながっても解けても独立して使える。門は、それ自体では内部空間を持たなくても、あいだに立つ2つの領域に対して内外の関係をつくる。門が閉じていても門構えを通してあちら側を感じたり、くぐる人の態勢を整えさせたりして、人にいろいろと働きかける。門が部分として家全体に組み込まれないでバラバラのままであれば、門がもっと多様なあちら側とつながれるのではないかと考えた。

この敷地の周囲では、屋敷地の大小の門や神社の鳥居が、ひとつながりのランドスケープを切ったりつないだりしている。山村集落の家屋と地形のシンプルな関係の中で、領域の個性は門を通じて垣間見えるようになっている。門という奥を予感させる境界面を重ねて、うちとそとを混ぜ合わせたり反転させて、大きな風景に拡張し一体になるような建築をめざした。

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