作品: Works:
裾野のロッジ
Lodge in Susono

富士の裾野、標高1000mの地点に位置する高原型別荘地。1000ある区画のうち約半数に別荘と定住のための住宅が混在する。更地の区画は森に埋もれ、別荘地らしい低密さが維持されている。溶岩流のつくり出す地形に沿って整備された別荘地には、一般の住宅地のように整然とした区画と、曲がりくねった山道に沿う不整形な区画とが混在している。地割りだけでなく、在来木造やモダンデザイン、山小屋風のデザインが混ざっていて、家並みについても定住と別荘の両方の特徴が見てとれる。 クライアントは都心に住むマルチハビテーションの候補地としてこの敷地を購入した。定住するか、セカンドハウスとして使用するのか、クライアントも私たちも未定のまま、まずは中心となる15坪ほどの平屋を計画した。生活のための最小限のスペースを想定し、暖炉と薪の保管のための下屋を付属させた。東の谷と西の丘陵の連続を感じ、南面に緩勾配の庭をつくれる場所に配置する。地割りより大きな地形とそれに関係する流れ(水、空気、視線、人、動物)から配置を考えた。 ちょっと足らないくらいのちょうどいい平屋を具体化するなかで、南側に別棟を延伸させることにした。ただ、ワンルームの機能や居場所をこまぎれにして別棟に配置するのではなく、マルチパーパスなワンルームの性質は維持し、ワンルームに収めることが難しい換気が必要な部屋や、半屋外空間を傾斜に沿って別棟に並べた。裾野の傾斜に沿うふたつの切り妻屋根は、谷側の面では連続し別棟の部屋たちをひとつに繋ぎ、一方の森(庭)側では部屋ごとに個別に構えと外部の繋がりを与えている。 別荘の空間ほど一時的で柔軟ではないが、住宅ほどにも機能分化していない住まいが、クライアントにもこの土地の別荘地の現状にも合っているように感じる。
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